京都府立大学 生命環境学部/京都府立大学大学院 生命環境科学研究科 食品安全性学研究室/食環境安全学研究室


食品安全性学研究室

 人は古くから、食物を原因とするさまざまな健康障害を経験してきました。この意味で、食物は時として人間の生存と生活をおびやかす存在でもあります。とりわけ近年は食料の生産や供給のしくみが大きく変化し、食品の安全性を確保する上での新しい課題がつぎつぎと生まれています。本研究室では、「食品添加物や食品に含まれる化学物質が人に及ぼす作用」と「食中毒の原因菌やその他の病原性細菌による宿主の免疫応答」を研究テーマとしています。

研究テーマ1

食品添加物、食品に残留する農薬・飼料添加物、食品に混入する有害物質などが人に及ぼす影響や健康食品の安全性は、関心の高い問題です。研究室では、このような食の安全性にかかわりのあるさまざまな化学物質について、その生体内運命・毒性発現のしくみを解明し、安全性問題の解決への道を見いだしていくことをめざした教育・研究を行っています。

研究テーマ2

人は様々な病原微生物の脅威にさらされています。その中には、不適切な衛生管理により食品から感染するいわゆる食中毒細菌や皮膚や腸管などに常在する日和見感染菌などがあります。研究室では、宿主の自然免疫機構で重要な役割を担っているマクロファージと細菌の相互作用を中心に、殺菌作用をコントロールしている転写因子の活性化や細胞外小胞の役割について詳細に解析しており、さらにそれらの治療への応用を目指した研究を行っています。

Newレポート

マクロファージの細胞外小胞が運ぶ細菌タンパク質による炎症反応

真核生物の哺乳動物や原核生物などあらゆる生物は、細胞が放出する細胞外小胞(EV)を使った細胞間コミュニケーションの機構を備えています。EVは、脂質二重膜からなっており、その中には選択的に取り込まれたタンパク質や核酸が内が含まれているため、その内容物が細胞に対して様々な役割を発揮します。我々は、主にEVによる炎症反応に興味を持って研究しており、EVを放出する細胞のおかれる環境によって変化する内容物とEVによる炎症シグナル機構を解析しています。最近、細菌感染時にマクロファージから放出されるEVと細菌のEVが存在する環境で起こる炎症反応を引き起こす細菌の病原性因子をみつけました1, 2。それぞれのEVが感染局所から全身へと細菌の病原因子を連携して運搬することにより、次々にサイトカインが産生されるので、細菌とマクロファージが直接的に相互作用せずとも炎症が惹起されることを示しています。このEVを介した炎症反応は、敗血症などによるサイトカインストームのメカニズムの一つと考えています
論文
1. Imamiya R, Shinohara A, Yakura D, Yamaguchi T, Ueda K, Oguro A, Minamiyama Y, Ichikawa H, Horiguchi Y, Osada-Oka M. Escherichia coli-Derived Outer Membrane Vesicles Relay Inflammatory Responses to Macrophage-Derived Exosomes. mBio. 2023 Feb 28; 14(1): e0305122. doi: 101128/mbio.0351-22
2. 岡 真優子,今宮 里沙,篠原 明莉.細胞外小胞が運ぶ細菌タンパク質と炎症.Medical Science Digest. 2022 Oct; 48(11): 542-543

一緒に研究しよう!

細菌と免疫細胞の相互作用をこれまでとは違った視点で研究してみませんか

連絡先 岡 真優子(mayuko-oka@kpu.acjp)